春来たる君の軌跡

統合失調症を発症するも回復し、日々前向きを目指しているお兄さんです。

光と影

工場を退職して寮を退去することになるのだが、今回は荷物を彼女の家に宅配して電車で彼女の家に向かった。工場を退職したことは彼女にとってあまり大きな問題ではなく彼女の家から通える職場を探そうとしている22歳のヒモ生活の夏が始まる。 

朝彼女が仕事に行く前に朝食を作ってくれて、それを二人で食べて化粧してOLモードに変わる彼女を駅まで二人で歩いて見送ってからが僕の一日のスタートになる。求人情報誌を買ってきて読むと地元の青森とは違い愛知県内の色々な職種の募集もあるし未経験でも応募可能なものもたくさんあった。その中には彼女のアパートから通える場所の企業もあり、やってみようかなあと悩んだり、ちょっと電車で通ってガテン系の職種をやってみようかとも思ったりもしながらまだすぐには仕事を始めないでいいかなとのんきでいました。 

彼女が帰宅するのはだいたい19時前くらいで帰りに晩御飯の食材を買ってきてくれて美味しい手料理を作ってくれていた。お風呂は彼女のほうが一緒に入るのが好きなタイプの人だったので裸の付き合いですよ、なんでも話しましょうよと言ってよくお風呂で話をしていた。 

そんな幸せな状況にいるなら仕事を頑張れそうだが、いまいち踏み込めず5日間くらい経っていた。 

そんな中、一回目の自動車工場の期間工にもう一度応募してみようと思いたつ時が来た。面接場所は名古屋駅から近いビルの一角にあった。面接してみると、一度経験されているのですね、というような軽い感じで短い面接でした。三日以内に採否連絡しますとのことで電話を待つ。二日後に連絡がきて、この度は採用を見送らせていただきますとのことだった。体調不良の自己都合退社だったから駄目だったのかと思ったと同時に、別に僕の仕事の実績など高く評価されていたわけではなく、もう一度来てほしいとは思われなかったのだと寂しい気持ちになりました。次の日あたりにその工場でお世話になった社員の方から電話があり、応募したやろ、どうしてるん元気か?ということで近況を話しました。上司だった組長も異動になったことも聞いたし現場は動いているんだなと懐かしく思いました。 

ヒモ生活に慣れはせずに段々と体調の変化を感じるようになってきました。過食が始まり、自分で無洗米を炊いて2合を一気に食べた後ソワソワしてなんか食べたいと思い牛丼屋に行って大盛を食べたりした。日中は部屋の中をグルグル歩き回っていた。自分の体臭を嗅ぎたくなり何回も確認したり、射精したくなる頻度が増えていた。彼女が仕事しているのに僕は何をしているのだと自己嫌悪が始まっていた。

彼女が湘南乃風のライブに行こうとチケットをくれて二人で見に行った。会場が一つになっている中、僕はメンバーより舞台袖で客席の方を見ているスタッフが僕が乗っていないのを気にしているのでは?というような妄想が出てきながらのライブ観戦だった。曲の中では若旦那の札束という曲を聴いて自然と涙が出てきてパワーをもらった。男らしさとメッセージを伝える力強さのパフォーマンスは最高でした。僕の前にいる小さいからだの彼女をそっと抱きながらライブを見終わり、これが二人の一番の思い出になったと思う。 

二人のアパート暮らしの最中には青森の元カノからも電話があった。心配して電話くれたようで今のあなたは昔の本来の良いところが全くなくなっていると言われた。青春時代いろいろな思い出を作った元カノは少し話しただけで事態を把握したようで帰ってこなきゃあなたは壊れてしまうと言ってくれた。 

一緒に愛知に来た中学の同期生は嫌々でも仕事を続けていたが、僕には帰った方がいいよ、と電話をくれた。 

彼女に僕が鬱なのかもしれないと話したときは、治るように一緒に支えるよと言ってくれて愛情がいっぱいある子なんだなあと思ったと同時に、僕は恩返しもでできずに逆に悲しませるかもしれないと胸がギュッと締め付けられた気持ちになった。青森に帰ることを決めたのだが交際をどうするかを決めなかったというか別れ話を切り出せなかった。 

二週間と少しくらい彼女と暮らした二回目の愛知では彼女が僕のことを全て受け入れようとしてくれて僕より大きな人としての愛情をもった女性ということを印象付けてくれた温かさと、体の不調は本能的に行動に現れるものということを知り、陽と陰のはざ間に居た名古屋の夏だった。