春来たる君の軌跡

統合失調症を発症するも回復し、日々前向きを目指しているお兄さんです。

真夜中のぬくもり

仕事を辞めると収入が止まる。また次の仕事をしなくてはいけない。次は新たにグランドオープンしたパチンコ屋の駐車場警備の仕事に就く。誘導棒を持って腕を振るのだがその様が綺麗でセンスがいいと褒められた思い出がある。ここでもまた妄想体験はあった。閉店後に駐車場出入口に立って道路側を見て待機するというちょっと意味がわからない時間があった。15分間だったのだがその時間に何かの特別なテストが行われるという妄想と闘った。暗い中で23時前でそんなに車通りの多い場所ではなく人はほぼ歩いていないのだが何故か人の気配を感じてパチンコ屋に危害を加えようとしている人がいると思った。僕は神経をその気配に集中させて何かあったらすぐに無線を入れなくてはと思い、その気配の人物の仲間の車がやって来ないかとか、この出入口から見える場所以外から犯行は企てられているのではないかとか、ピストルで攻撃されるのではないかとかさえ思ってしまった。今ではこれは病的な妄想だと思えるが当時はその15分のテストに様々な機関が見守っていると思った。結局何も起きず23時の勤務終了時間になり、帰宅するのだがこの時はもう限界が近づいていたと思う。 

この頃僕は人生で初めて救急車に乗っている。 

当時僕は夜の街にハマっていた。あるお店の女の子にぞっこんになっていて会話していても楽しく、ドレスアップした女の子など触れ合う機会がなかったし何よりその店はポールダンスのショータイムもあるしクラブのようなミュージックも流れているし、店長やたくさんの女の子達がよくしてくれていたのでその空間の全てが好きだった。 

ある日の夜中、自宅で休んでいたところ、急に胸騒ぎのような感じで県外で暮らす兄のことが心配でしょうがなくなってしまい落ち着かなくなってしまう状態になった。昔僕の隣の部屋が兄の部屋だったのだが県外に出た後、弟が僕の隣の部屋になっていた。兄が大変な事態になっていると思い込みが激しくなってきて焦る気持ちがでてくるが、体から力が抜けてきて誰かにこのことを伝えようとも隣の部屋の弟を起こして父を呼んでくれと言うのが精一杯で弟の布団に倒れ込んだ。 弟は直ぐに父と母を呼んできてくれて父はとりあえず僕の部屋に戻るように促し自室へ戻ったが座ってられなくなり、腰のあたりがズキズキ痛むようになってきた。イデーイデーと言っていると母は一生懸命にさすってくれた。父はおそらく保険証を探していたのだろうが僕の意識ははっきりしていないく、好きな女の子が登場してキスをしてくれると思って女の子の名前を囁いた。母は、何言っているおかさんだよ!としっかりしろという感じで言ってくれた。僕はとにかく早くしろ早くしろ!と言っていたと思う。弟は俺だとだめなのか?と言って訳が分からないことを言うなあと思ったが僕は、いいよ!とにかく早くしろ!と言っていた。僕は歩ける状態じゃなかったので弟がおんぶして二階から運んでくれた。車に乗ると僕は一連の流れがおかしくて笑いが止まらなかった。とにかく笑っていた。今までの反動のように爆笑が止まらなかった。母はどうしてしまったんだみたいな顔をして、父も心配しながら真剣に運転してくれた。僕と母は後ろに乗って助手席に弟が乗っていると思っていたが弟は乗っていなかった。僕はめぐせーじゃよ!めぐせーじゃよ!(恥ずかしい)と叫んでいた。この時タイヤがパンクした。1キロくらいしか走っていなくて止まった。父が救急車を呼んでくれた。この時僕は妄想の最中だった。全てが映画の撮影で行われていて僕が主人公だと思っていた。救急車が後ろに停まり父と段取りを立てていると思った。救急車に母と乗りようやく笑いも止まり落ち着いて座った。指になにかを測るものを装着されて救急車が動き出した。僕はこの時真剣に僕が好きな夜の店で結婚式の撮影が始まると思っていた。みんなドレスで待機していると思った。外の様子は救急車から見えないし緊張しているが撮影スタッフはみんな一流なので身をゆだねようと思っていた。しばらく走ると現場に着いた。精神病院だった。 

初めての病院の当直の先生となにを話したかは覚えていないが、これを飲みなさいと水薬を飲んで落ち着いた。夜間の病院が今日の撮影場所なんだなと当時思っていたと思う。気づくと父も来ていて帰り道は特になにを話したか覚えていないが朝方に深い眠りについたと思う。 

あの時に結婚式を行うと思っていた女の子は間もなく店を辞めたが僕は次もまた夜の女の子に恋をしていよいよ入院しなくてはいけないほどの状態に陥っていく。